

ワコムのイラスト講座にようこそ。今回のテーマは女性の顔のイラストです。女性の顔は上手く描けたときは嬉しいものです。描かれる女性の年齢や出生地によって、また正面顔か横顔かによっても、イラストの感じは変わってきます。もちろん、アーティストの作風も大きく影響します。また、同じ顔でも昼と夜で印象が異なることもあります。
本チュートリアルでは、顔を写実的に描く方法の基礎をステップごとに説明します。肖像画、似顔絵、コミックス、アニメなどの分野で世界中のアーティストが長年にわたり実践している方法です。もちろん、作画に絶対のルールなどはなく、自分の作風に応じてアレンジしたり、新たな解釈を付け加えたりすることができます。女性の顔を描くコツなど、イラスト練習に役立つ基礎知識を紹介します。
今回は女性の顔を想像で描いてみます。その中で、より写実的に仕上げるのスキルと技法を紹介します。まず頭の位置を決め、顔のパーツを描き、最後に全体の調子を整えて色を塗ります。
主に初心者向けに解説していますが、すでにイラストを描いている人にも新たな発見があるかもしれません。本チュートリアルではペンタブレットの利用したデジタル制作のメリットについても話をしていますが、紙にペンで描いても
描き方を同じように学ぶことができます。
目次
ラフの位置取りします。頭、目、鼻、口をバランスよく配置する目安として、簡単な図形を描きます。
円を描きます。うまく描けない場合は、手首を固定して、腕全体で描くようにすると描きやすくなります。今回の例のように、細かい線をつなげて円にするのも良いです。これは位置を取るためのラフなので、円が多少不格好でも大丈夫です。
円の中心に縦線を描き入れます。顔を描くときに左右のバランスを取る「中心軸」になります。
円の中央に横線を引きます。縦軸を、さらに下に半径と同じ長さ伸ばします。
縦軸の半径の中心に、さらに横線を引きます。図のように、円の直径を4等分に線を引きました。その下には半径分の延長線が引かれています。
少し小さめの円を描きます。円の直径を4等分した上から3番目の横線と、大きい円の下まで引いた延長線の下を通るように円を描きます。大きい円の4分の3の円が描けました。小さい円の中心に印をつけます。まだ全体がわかりにくいですが、アタリの完成まで、もう少しです。
アタリが完成したので、線でつなげていきます。2つの円を一つにつなげます。つなげた円で、頭蓋骨と下顎を表現します。
描きたい顔立ちに合わせてふっくらさせたり、シャープにします。内側にへこんだ線を引くと、こけた感じの頬になります。
顔の輪郭のおおまかな形ができました。顔のパーツを配置していきます。03で書き込んだ、短い横線が手かがりになります。
• 一番目の上の線が、髪の生え際です。
• 上から二番目の線は、不要なので消しても大丈夫です。
• 上から三番目の線は、目を描くための目印です。目は思ったより低い位置にあり、顔のほぼ真ん中に描きます。
• 鼻は大きい円の下側の縁に描きます。円と縦軸が交わるところに、鼻の下端が来るようにします。
• 口は小さい円の中央に描きます。
目や口の幅が広すぎたり狭すぎたりしないように、顔の横幅に目印の区切りを入れます。左右の顔半分を縦方向に半分に区切り、それをまた半分に区切り、顔全体の横幅を8等分します。
8等分の線のうち、左端から2番目と4番目の線の間に左目を描きこみます。右目も同様です。瞳は目の中心に位置するので、端から3番目の線の位置、つまり顔半幅の真ん中に描きます。
口の幅は、左右の瞳を結んだ線の長さとほぼ同じです。目と口をざっくり描きこんだら、平たいU字の線で鼻の底面を描きます。まだ仕上げる必要はありませんが、それぞれのパーツの端の点ははっきり決めておきます。
眼、口、鼻の位置が決まれば、不要な線は削除できます。ただし髪の生え際の線は、後で必要になるので残しておきます。顔らしくなりました。次は、頭の形を整えていきます。男性に比べて女性の頭はふっくら丸みを帯びているので、輪郭は柔らかい曲線で描きます。
まず、あご先の輪郭から始めましょう。なるべく左右対称になるようにあごを描きます。あごが細いほど女性らしい顔立ちになりますが、細くしすぎないように、気をつけましょう。
あごがうまく描けたら、髪の毛の生え際の位置から輪郭を描き始めます。まずは下描きの線に沿って描きます。目のあたりで輪郭を僅かにくぼませ、頬の辺りは緩やかにふくらませ、その先は顎のラインまでほぼ直線でつなげます。
これから描く女性の表情について考えてみます。人の表情は、主に眉と口角の向き(上げるか下げるか)で描き分けられます。ここでは、落ち着いた表情でおだやかな顔を描くことにします。口角は少し上がり気味に、眉は寄せずに真っ直ぐに描きます。
顔のラフができました。眉を描きこむ位置を決め、唇をおおまかに描いてみました。次はいよいよペン入れです。
続けて、顔のパーツの描き方について説明します。
ラフを描いたレイヤーを下描きレイヤーとして背面に配置します。下描きレイヤーの不透明度を下げると、ペン入れしやすくなります。
上まぶたは、人によって様々なタイプがあり、形が少し違うだけでも、顔の印象を大きく左右します。特に女性の顔だとふっくらとした丸みを持たせて描くと良いです。目尻からすくっと立ち上がり、目頭へむけて、なだらかに下がる線で描きましょぅ。上まぶたは目尻から描き始めると描きやすいです。
下まぶたは、上まぶたよりも膨らみを抑えて描きます。また、描き始める位置も上まぶたの端とは一致せず、上まぶたの線の方が左右の端が少し長くなります。下まぶたの両端はわずかに上向きにします。笑顔は目尻が表情筋によって押し上げられるため、目尻の曲線の傾きが特に大きくなります。
まぶたの描き方により表情が大きく変わってくるので、気に入る線が描けるまで何度もトライしてみましょう。
次に目を描きます。まぶたに接するように目を描くと、正面を見据えているようになります。
二重まぶたの線を引くと、顔の表情が豊かになります。二重の線がまぶたにどれくらい接するかでも、表情のニュアンスが変わってきます。例えば、まぶたの上の方に二重の線を入れと、眠たそうな顔になります。二重まぶたの線の入れ方で、様々な感情を描き分けることができます。
目を自然に開いているときは、二重の線はまぶたとほぼ平行になります。実際には完全な平行線にはならず、目尻から瞳に向けて広がり、目頭に向けて狭くなります。
虹彩は、瞳孔の周りを同心円状に取り巻いている部分です。目全体の半分程度を占めています。瞳を描くときには、円を描くのが簡単です。上まぶたが被さり、円の上と下が隠れますが、その隠れる部分は後から消します。
眉の輪郭を取ります。眉尻に向かって細くなるように描きましょう。女性の眉は男性より細くて、アーチの膨らみが大きくなる傾向があります。細くつり上がった眉だと険しい表情になるので気を付けてください。
眉頭を斜め45度の角度で描き始め、眉尻に向けて段々と毛の向きを平らにしていきます。さっと線を引くような感じで眉頭の毛から描き始めます。一本ごとに毛の角度を微妙にずらしながら描き進め、眉毛の輪郭を埋めます。
デジタル作画なら、はみ出した部分を消すのも簡単です。
デジタル作画なら、パーツを反転コピーすることも可能ですが、目や顔は左右で完全に同じ形ではなく、また、上手く描けるようになるまで練習を重ねることが大切です。
瞳は複雑な構造をしています。瞳孔から外に向けて細かく描きこむことで、瞳らしく描けます。瞳に色を入れることもできます。
仕上げに、瞳にハイライトを入れましょう。一箇所にハイライトを入れるだけでなく、窓や景色全体を瞳に反射させることもできます。ハイライトは、あまり大きくせず、シンプルな形で入れるとよいでしょう。控えめに入れると効果的です。
口のラインは単調にならないようにします。口角を少し強めて描いたり、短い折れ線を描きます。中央に向けて下に弛んだラインにすると、女性らしさが出ます。
ペン入れではラフよりも口の線を少し短くしました。そのほうがバランスが良いと思ったからです。
常に全体のバランスを見失わずに、それぞれのパーツの位置が正しいかを確認するようにしましょう。改めて見直すことで手直しの必要なところに気づくことがあります。
男性と女性では、唇の厚みやカーブが異なります。まずは上唇から描きましょう。
左右別々のラインで上唇を描きます。できるだけ左右対称になるように、口角から中央に向けて少し上向きの線を一気に引きます。次に、2本の線の合間をV字につなぎます。
下唇は上唇よりもやや厚く描いても良いですが、絶対の法則ではありませんので、好きなバランスで描きます。下唇の中心は平らになる感じに描きます。
下唇の描き方を一つ間違うと、取り付けたような口のようになってしまうことがあります。これを防ぐには、ちょっとしたコツがあります。下唇の線は口角までぴったりと引かず、口角に向かってさっと筆を払う感じで、線の太さを自然に細くします。
鼻は顔のなかで最も大きく隆起しているパーツです。この隆起した感じは、横顔だと比較的描きやすいのですが、正面顔だと表現しづらいかもれません。二次元の世界で表現するには、いわゆる「短縮法(遠近法の一種)」で奥行きを出します。初心者の方には難しいかもれませんが、一度覚えてしまえば応用の利く方法です。ここでは、鼻先を短い横線で描き、その左右を少し尻上がりにします。鼻先の両端は外側に向けてゆるやかに広がるように線を伸ばします。
鼻先の脇から、続けて小鼻を描き入れます。ほぼ横向きの線から描き始め、左側の小鼻なら右目の目頭に向けて弧を描きます。左側も同様です。
ここで、顔全体のバランスをチェックしてみましょう。鼻が大きすぎたり、小さすぎたりしませんか。鼻の幅はどうですか?納得するまで手を加え、描きましょう。ソフトウェアによっては変形ツールがあるので、それを活用してもよいでしょう。
顔の重要なパーツがすべて描けたところで、最後にもう一度、頭の形を見直します。基本的には、ラフの線をそのままなぞればよいわけですが、微調整が必要な箇所がないかどうか、ペン入れの前に確認しましょう。
顔には様々な影やしわがありますが、特に女性の顔を描くのに使うと効果的な2本の線をここでご紹介します。
一つは唇の下にある顎のラインです。これで顎の立体感を出し、口と連動している領域を視覚的に表現します。
もう一つが頬の影です(左側)。この線を入れると女性の顔らしくなります。頬の影となる線を上手く入れるには、少し試行錯誤が必要かもしれません。痩せこけたり、変に笑った表情になったりしないように注意します。
次に、耳の位置を決めます。耳は目元から鼻先と同じ高さで描きこみます。ここでは正面から見ているので耳は、ほぼ平らに見えます。やや傾けた小さな四角を描きましょう。
女性だと髪で耳が隠れることが多いので、描くのも楽です。ヘアスタイルによっては、描かずにすむこともあります。耳は角張った形状、しわ、影になる部分などかあり比較的複雑な構造をしているので、別のチュートリアルで詳しく説明ができればと考えています。
図のように3ステップで耳を抽象的に描くことができます。27で描いた四角のアタリをうまく使います。
次のステップから、髪の毛と仕上げ、色塗りに進みます。
06で描いた髪の生え際のアタリを参考にします。ここで生え際のアタリを消しても問題ありません。顔全体のバランスから髪の位置を決めることもできます。
耳と同じように、髪の毛は練習して描き慣れる必要があります。ここではポイントを説明します。
まずは頭頂部から位置取りをし、髪形のラフの線を描きます。ラフは後で隠せるように新規レイヤーを使います。中央よりやや右に取った分け目の補助線から、なめらかな弧を描くように髪を入れていきます。頭頂部から左右の耳に向けて髪の毛を描きます。ヘアスタイルにルーズ感を出したいときは、髪の流れに沿って何本か毛を描き足します。
耳の下に髪の毛の流れを描きこみます。この時、首の輪郭を決めます。
左右の髪の毛を描くときに、つい髪の毛のボリューム感も出したくなりますが、ここではまだ細かくペンを入れません。
髪の毛を描くときは、ゆっくりと慎重に線を描きこむのではなく、さっと勢いよく線を描きます。髪の毛の一本一本を描くわけではありません。それよりも、部位ごとに髪の毛が流れる方向を考えます。その方向に応じて、後でペン入れをします。髪の毛の束ごとに生え方や流れに方向があるので、髪の毛を描く時には束を意識します。髪の流れを交差させないうようにします。この例では、いくつかの毛束を自由に描きこみ、髪型に遊びをもたせました。想像を働かせて描くことができます。髪の毛はイラストの醍醐味なので、存分に楽しみましょう。
一気に線を引くことに慣れてくれば、のびやかな筆運びで、きれいなヘアスタイルに描き上げることができます。髪の毛の仕上げには、新しいレイヤーを使います。ラフで描いた線を参考にしながらペン入れし、出来上がったら下描きレイヤーは非表示にします。必要に応じて、長すぎる毛や顔にかかった余分な毛を削除します。顔と髪は別のレイヤーなので、顔のラインが消えてしまうことはありません。髪の毛を描くときに線の太さや描きこみ具合を変えて、様々な表現を試してみましょう。例では、主線は太い線ではっきり描かれ、その間のサブになる線は細く描かれています。髪の毛を描くときに何よりも大切なのは、筆の勢いです。デジタル作画のいいところは、失敗したら何度でもやり直せること。気に入る線が引けるまで、繰り返し描くことができます。
いよいよ細部の描きこみです。自由に仕上げましょう。以下に最後の仕上げに使える、ちょっとした工夫を紹介します。
• 瞳にさらにハイライトを加える
• 唇を、瞳と同じように描き込んで質感を出す
• 鼻の輪郭に軽く影を入れる
線画のポイントを説明してきました。少しでも今後の創作活動のヒントになれば幸いです。このチュートリアルだけでは、すべてのテーマを網羅することはできませんが、
ワコムではさまざまなチュートリアルを提供していく予定です。今回は女性でしたが、男性の顔を描いたり、年齢に応じて顔を描き分けたりするにもスキルが必要です。また、正面以外の角度から見た顔の描き方、髪・鼻・耳などの顔のパーツの描き方、手足や身体全体の描き方などのテーマを取り上げていきます。
本チュートリアルでは、イラスト制作の基礎について説明しています。今後も本チュートリアルを参考いただき、色々な作品制作に挑戦して、デジタル制作をお楽しみください。
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